「万世一系なんて幻想」と言った天皇がいた

今日図書館から借りてきた本に興味深いことが書いてありました。

山本幸司編『網野善彦対談集5』

網野善彦の対談集ですね。

その中の一つの文化人類学者の山口昌男氏との対談にあります。

「女性天皇論議が問い直す日本、王権、そして女性」
(初出『論座』四四号、1998年12月)

網野先生はこう仰ってます

天皇は、一面では中国大陸的な硬質の制度の上に立ちながら、神聖王としての柔らかな部分も持っている。日本の王権には、その両面がずっと生き続けていたのでしょうね。古代に現れた女性天皇にそのことを感じます。「女性は摂政や関白にはなれないが、天皇にはなれる」という長く続いた伝統も、そういうことに由来したのだと思います。
ところが、明治時代になって、この柔らかな部分が切り捨てられ、制度としての非常に堅い部分が「神聖」性まで含めて法制化されてしまいました。それは単に天皇を「男系の男子」に固執して女帝を否定しただけにとどまらず、女性の公的な社会的地位をほとんど無視した民法、家族制度にまで至ってしまうわけです。
ただそのことによって、天皇制批判が、見えやすい制度(堅いもの)への批判になりがちです。しかし天皇制は制度だけの批判しきれるものではなく、柔らかい部分こそ本質にかかわっているので、いろいろな形で日常的にも存在するそうした要素を根底から批判しなければ、「日本」の問題は解決しないと思います。


近代までは「女性は天皇になっちゃダメ!」という掟はありませんでした。
しかし、明治維新によって日本は軍隊というものを持つことになった。
天皇は陸海空軍の元帥。
軍人は当時男性しかなれないものでした。
女性が軍人のトップになるということを許さなかった。
日本の家長制度もあれは軍隊を意識したものです。


山口昌男氏が最後にこう仰ってます。

そうなると当然、万世一系が問われるわけですが、一四世紀初めに在位した花園天皇は、「万世一系などというものがあるが、それはまったくの幻想で、天皇に徳がなければ、いつでも天皇は瓦解する」という意味のことを言っています。これは一種の革命思想ですが、天皇がみずから、そう言った時代もあったということです。

ヘカテーの万世一系論を信じている人たちの想像図↓
39c0fbb6cdaed2e95527865a5074b106_2016030319351267c.png

花園天皇は『誡太子書』にこう記しています。
而して諂諛の愚人は以為へらく、吾が朝は皇胤一統、彼の外国の徳を以て鼎を遷し、勢に依りて鹿を逐ふと同じからず。故に徳微なりと雖も、隣國窺覦の危きことなく、政乱るると雖も、異姓簒奪の恐れなし。是れ其の宗廟社稷の助、余国のに卓躒たる者なり。然らば即ち纔に先代の余風を受け、大悪、国を失ふことなければ、即ち守文の良主是に於いて足るべし。何ぞ必ずしも徳の唐虞に逮はず、化の陸栗にしからざるを恨みんやと。士女の無知、此の語を聞いて皆以て然りとなす
民の暗愚なる、之を導くに仁義を以てし、凡俗の無知なる、之を御するに政術を以てす。
苟もその才なくんば、その位に処るべからず、人臣の一官も、之を失はば猶天事を乱るといふ、鬼瞰遁るることなし、いかに況や君主の大宝をや


ヘカテーの大雑把な現代語訳
「万世一系だから滅んだりしなーい。だから天皇がバカでもオールOK!」とか言って遊んでちゃダメ!
ただの役人であっても相応しい能力を持たない人間がその役職に就くとその組織は混乱する
天皇だったら余計そうなる。
身を引き締めて徳を身につけなさい!

『誡太子書』は皇太子殿下もお読みです。

ちなみに花園天皇は
「生まれた時から苦労を知らずに過ごしてきて、庶民の生活の苦しさを考えたこともないバカが天皇になってはならない」
とも『誡太子書』に記しています。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

実に的確な指摘

明治維新の頃、旧皇室典範を策定した際も当時の為政者たちは女性皇族に皇位継承を認める動きはありましたね。中には女系天皇も認めようではないか、という意見も。

それでも、やはり当時の日本の国策上、男系の男子の継承に限定して、伝統であった男系女子の皇位継承さえも認めないとしました。それが今日に至っているわけです。

そもそも明治憲法下の天皇の位置付けなんて、全然伝統的ではないし、家制度もかつての武家の風習を国民に押しつけたようなものです。その結果、お世継ぎが生まれないことに苦悩する人はいましたし、家制度なんて父親に結婚を許されなかった若い男女のカップルが無理心中を図るといった問題も昭和の初めに出ていますし。軍隊なんて、天皇の威光を振りかざして政治に口出しするし…。

全部が悪かったとは思いませんが、こんなに問題だらけの戦前日本を取り戻したがっている人たちの考えがわかりませんわ。


>「生まれた時から苦労を知らずに過ごしてきて、庶民の生活の苦しさを考えたこともないバカが天皇になってはならない」

花園天皇のお言葉の通りなら、アンチ東宮たちの期待の星、秋篠宮には到底無理ですわ。幼少の頃から自由気ままに育てられ、お忍びでグルメ、旅行三昧。お子さんの学習院中退を易々と許したなどなど。そんな皇族にいくら公務で目立っても、庶民の気持ちなんて分からないし、天皇なんて無理です。

とりわけお子さんが学習院を中退し、別の大学に移ったことを容認したのは、相当国民の反感を買ったんじゃないですか?世の中では大学に行きたくても行けない、奨学金の返済で大変な思いをされている人たちが多く、社会問題になっていますからね。

お呼びでない

さすがブログ主さんですね。
本と写真集をいっぱい揃え、図書館で本を借りたりして、網野善彦にまで目を通しておられるとは。素晴らしいです!どこまでもあなたについていこう。

私なんか端末1台でなんでも済ませてますからね。以前は本屋さんにも図書館にもよく行ってたのですよ。仕事と家庭の事情で今は無理、と言い訳をしておこう。そんなことはどうでもよくて、端末1台で見つけた小ネタを。

以前、祭祀を調べたときに歴代天皇の式年祭があることを知ったのですが、
http://retsugaiha.blog.fc2.com/blog-entry-1129.html
式年祭の前にその天皇のご事蹟のご進講があります。たぶん、以前に花園天皇の事蹟のご進講もあったのでしょうね。皇太子さまはきちんと勉強しておられるのだと思います。そして、専門の学者さんを呼んでのご進講に、ナマズ夫婦は参加していません。お呼びでないのか、つまらないので行きたくないのかはわかりませんが、たぶん天皇とその継承者だけが受けるご進講なのでしょうか。そして、雅子さまは、このご進講には出席しておられることが多いのです。


平成20年8月18日(月)孝昭天皇ご事蹟について(二千四百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子同妃両殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王妃殿下 ご説明(財団法人全日本ろうあ連盟顧問,・・・)(宮邸)

平成20年9月11日(木) 後二條天皇ご事蹟について(七百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子同妃両殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王妃殿下 文仁親王妃殿下お誕生日につき天皇皇后両陛下へご挨拶(御所)

平成22年2月8日(月) 反正天皇ご事蹟について(千六百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子同妃両殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王同妃両殿下 帰朝ハンガリー大使夫妻ご接見(宮邸)
 文仁親王殿下 生き物文化誌学会事務局会議ご出席

平成22年2月16日(火)孝安天皇ご事蹟について(二千三百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・秋篠宮家 (日程空白)

平成22年3月18日(木) 應神天皇ご事績について(千七百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王妃殿下 鳥取県お成り(「第61回結核予防全国大会」ご臨席及び地方事情ご視察)

平成23年7月25日(月) 一條天皇ご事蹟(千年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 ご進講(御所)
・皇太子同妃両殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王妃殿下 (財)全日本ろうあ連盟顧問ご進講(宮邸)
文仁親王同妃両殿下 外務省国際法局長ご進講(宮邸)

平成25年12月13日(金) 後櫻町天皇ご事蹟(二百年ご式年に当たり)
・天皇皇后両陛下 (御所) ご進講
・皇太子同妃両殿下 ご進講 ご陪席(御所)
・文仁親王同妃両殿下 宮中茶会ご陪席(宮殿)

花園天皇のこの言葉

探してたんです。教えてもらってすごく助かりました。
ヘカテー様ありがとうございます!
男系派、特に竹田研究会のやつらに聞かせてやりたいですわ。
ちなみに花園天皇の時代って、南北朝の動乱が尾を引いていた時代です。
院政期から鎌倉、南北朝、室町。この時代は王権が非常に不安定だった時代でもあると思います。
天皇や皇族が武士の争いに巻き込まれたり、島流しにあう時代でもあった。
そうした時代において、よく学問をして徳を積むのが大切と言った花園天皇の言葉は意味があると思います。

愛子さま、本当によいお子さまにお育ちだと思っています。
天皇になるのに愛子さまでは足りないなんて全く思いませんが、こんなに素敵な女の子が今の皇室にずっと閉じ込められるなんて「もったいない」という気持ちもします。
雅子さまがご成婚なさった時にも、「もったいない」と思った人が多かったと聞きました。あの頃から、なんにも変わっていないのでしょうか、、、

万世一系論者の中には「神輿は軽い方が良い」という人がいるのかもしれませんね。
プロフィール

ヘカテー

Author:ヘカテー
皇太子ご一家大好きの神奈川生まれの神奈川育ちの神奈川県民。昭和生まれの平成育ち。真っ当な日本が好きなだけだにゃ~
↑悪いナマズを踏みつけている招き猫
メールアドレス retsugaiha@excite.co.jp

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR