フグが食べたかったエンペラー

昭和天皇の侍医をされていた杉村昌雄さんの著書『天皇さまお脈拝見』を読んでいると面白いエピソードがありました。





ある日昭和天皇から女官を通じてこんな質問が寄せられました。

「フグをたべてもいいか?」

宮中ではフグは絶対NGです。

天皇の食卓には上ることはあり得ません。

なぜ昭和天皇がそんなことを言い出したのかというと

常陸宮さまが以前いた女官の東園からフグを戴きましたと昭和天皇へ献上されたのです。

杉村医師は女官さんに

「それは困ります。やめていただきます」ときっぱり返答されました。

数日後、拝診の際に診察し終えて退出しようとすると

「杉村、ちょっと待て」と昭和天皇が呼び止めました。

「杉村はフグはいけないと言ったそうだね。どうしていけないのか」と昭和天皇は言いました。

とっくにその問題は終わっていたと思っていた杉村医師

「陛下、フグだけはどうしてもお召し上がりになってはいけないことになっております」と答えました。

昭和天皇、じろりと杉村医師を見つめました。その顔には「食べたい」と書かれていました。

ダメなものはダメと宮中の習慣やフグの毒について説明しました。

「杉村はそういうことをいうが、せっかくヨシ坊が東園を通じて持ってきたものだから、絶対、大丈夫だ。そんな杉村みたいなことをいうなら、それなら東園は、不忠の臣か」

と主張する昭和天皇

ヨシ坊とは常陸宮さまのことです。

「とんでもございません。東園さんはたいへん忠義なかたで、そんな不忠の臣というのには当りません。しかし、陛下がフグをお食べになるのはともかくおやめ願いたいと申しているだけでございます。」

と杉村医師は昭和天皇に言いました。

負けずに昭和天皇はこう返しました。

「フグの料理は、東京都の許可のある料理人でなければできないという。東園の持ってきたフグは、料理人が東京都知事の許可を得てやっておるのだから、いいではないか」

(よくそんなこと知ってるなと思いますよね)

負けずに杉村医師も返します。

「はあ。それはもう、重々、私も知っておりますが、たとえライセンスのある料理人がやりましても、何かのひょうしにフグの毒が陛下のお口に入らないとも限りません。それでどうということがあったら、もう、とてもおそれおおいことになります。また、侍医の責任も大だと思いますから、それは、是非、おやめいただきたいと思います」

まあ、ここまで言われたら普通は「じゃあ、やめよう」となりますよね。

でも昭和天皇はこれに納得しません。

「杉村はそういうことをいうけれども、それでは、フグはどういうふうに料理し、また、どういうフグに毒があるのかないのか、知っておるのか。杉村は知りもしないで、そういうことをいう」

昭和天皇もしつこいな。そこまで食べたいのか。

杉村医師はこういうしかありません。

「そうでございましょう。でも一般に、フグというものは毒を持っております。卵巣、肝臓。場合によっては、肝臓から血液のなかまで毒がまわっております。是非、おやめください」

杉村医師はひたすら「あなたは天皇だから万が一が起こってはならない。だから食べちゃダメ」と繰り返すしかありません。

ああ、弱ったと思っていた杉村医師。

この議論は2時間近くも続きました。

「杉村、そのへんでもうやめるよう」

美しい声が隣の部屋から聞こえてました。

良子さまです。

昭和天皇に負けそうだった杉村医師を上手にかばってくれたのです。

この後、杉村医師は本でフグの種類や料理方法などを細かく調べました。

また昭和天皇がフグについて聞いてくるかもしれないからです。

しかし、昭和天皇は蒸し返すことなく杉村医師のフグについての知識は披露されずに済みました。



フグ論争の数日後、なんと宮内庁関係者の奥さんがフグの中毒で亡くなったのです。

杉村医師は「やはり、あのとき、おとめしておいて本当によかった」と腹の底から思いました。



このフグ論争は杉村医師だけではなく杉村医師の先任の侍医とも大議論になりそうになったことがあるそうです。




昭和天皇のちょっと子供っぽいエピソードでした。





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茶目っけと優しさ

杉村昌雄さんの著書『天皇さまお脈拝見』

昭和天皇が良子様と一緒に御歩きになる時、良子様を何度も振り返られる御優しい姿にほっこりと心が温かくなります。

良子様と杉村医師の奥方エピソードも大好きです。

この本を読み返す度に、御二人の仲睦まじい御姿が自然と思い浮かびます。

昭和天皇が、ダダコネみたいな、でも微笑ましいエピソードです。 でも・・・立派な杉村医師ですよね。

昭和天皇こそ生物学者であったので、フグ毒については御存知だったと思います。
お食べになりたかったのでしょう。

それを聞いた杉村医師は(陛下のお身体に万が一の事があってはならない!)と思い、心配し、昭和天皇が希望されても「なりません!」と言い続けたのでしょう。

杉村医師・・・立派です。
「駄目なものは駄目なのです!」と昭和天皇の言い続けた。


時は流れて平成になり。
今はその職ではないようですが、宮内庁医務主管の金澤という医者。
この医者は、雅子妃殿下を直接に診察していないのに、雅子妃殿下を悪く言い、あげくのはてには、
「わたしは記者に、雅子妃殿下を厳しく書くように言っている。」
と発言した。

金澤という医者は他にもポカやらかしていますが、ここでは割愛しましょう。

で、この金澤という人間は本当に医者なのか?
こんな医者に診てもらいたいと思う人いるでしょうか?


昭和と平成。同じ医者でも雲泥の差です。
医者の質も人間性も劣化していると断定してよいと思います。

今も宮家だけ

地元では、毎年この時期に宮家へフグ献上のニュースがあります。
はい、届けられるのは秋篠宮家を始めとする宮家にだけです。
内廷皇族の皆様は、今も食べられないんでしょうか。

昭和天皇とお魚のエピソードといえば「アキガタナ」もありますね。
あれも可愛くて好きです。

お公家さんの底力

杉村医師は、香淳皇后のお腰の治療を巡って、入江侍従長と対立して、追放されたようですね。
あれほど昭和の両陛下をお慕いしていた人だったのに。

昭和天皇は、やはり昔から仕えている入江氏の方を信頼なさったんだと思うけど、なんだか残念な気がします。
香淳皇后も、長年信頼してきた女官を、「魔女」とあだ名されて追放されて悲しまれたけれど、これも入江氏が中心になってしたこと。

やっぱり千年以上も脈々と続いたお公家さんの、気に入らない人間の消し方は凄いものだと感心します。
プロフィール

ヘカテー

Author:ヘカテー
皇太子ご一家大好きの神奈川生まれの神奈川育ちの神奈川県民。昭和生まれの平成育ち。真っ当な日本が好きなだけだにゃ~
↑悪いナマズを踏みつけている招き猫
メールアドレス retsugaiha@excite.co.jp

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